「子どものためを思って言っているのに、なかなか伝わらない」
「話を聞いてあげたいのに、つい注意やアドバイスをしてしまう」
「親子で意見がぶつかったとき、どうすればいいのかわからない」
子育てをしていると、そんな場面はありませんか?

同じことを何度言っても聞いてくれないから、
瞬間湯沸かし器みたいに怒っちゃう~!!
・・・なんてことも(笑)
子どもに健やかに育ってほしいと願っているのに、気づけば怒ったり、言いすぎたりして、あとから反省することもありますよね。
そんな親子のコミュニケーションを見直すヒントになるのが、「親業(おやぎょう)」という考え方です。
親業は、子どもを親の思いどおりに動かすための方法ではありません。子どもの気持ちを理解し、親自身の思いも伝えながら、お互いを尊重できる関係を築くためのコミュニケーション方法です。
基本となるのは、次の3つです。
- 聞く: 子どもの気持ちを理解する
- 話す: 親自身の気持ちを伝える
- 対立を解く: 親子で納得できる解決策を探す
この記事では、親業の意味や誕生の背景、3つの柱の考え方、メリットや注意点を、初心者にもわかりやすく紹介します。



親業を知って、毎日の子どもへの声かけを、少し違った視点から一緒に見つめ直せたら嬉しいです^^
親業とは?親子の関係を育むコミュニケーション方法


親業とは、親と子どもがお互いを尊重し、理解し合える関係を築くためのコミュニケーション方法です。
アメリカの臨床心理学者、トマス・ゴードン博士が開発した「Parent Effectiveness Training(P.E.T.)」というプログラムがもとになっています。日本では「親業」という名前で知られています。
親業で大切にしているのは、親が一方的に子どもをしつけたり、言うことを聞かせたりすることではありません。子どもの気持ちに耳を傾け、親自身の考えや感情も伝えながら、親子でよりよい関係をつくっていくことです。
親業は「子どもを変える方法」ではない
子どもがなかなか言うことを聞いてくれないとき、ついこんな言葉が出てしまうことがあります。
「早くしなさい!」
「何度言ったらわかるの?」
「どうしていつもそうなの?」
親としては、子どものためを思って言っていることも多いでしょう。しかし、子どもには子どもなりの気持ちや考えがあります。親が正しいと思っていることでも、子どもにとっては納得できないことがあるかもしれません。
親業では、親の考えを一方的に押しつけるのではなく、子どもを一人の人間として尊重することを大切にします。
もちろん、子どもの希望を何でも受け入れるという意味ではありません。親にも気持ちや考えがあり、守らなければならないことがあります。
大切なのは、親だけが我慢するのでも、子どもだけに従わせるのでもなく、お互いの気持ちを大切にしながら向き合うことです。
親業は、子どもとの関わり方だけでなく、親自身のコミュニケーションを見つめ直す機会にもなります。
親業を提唱したゴードン博士とは?


トマス・ゴードン博士(Thomas Gordon、1918〜2002年)は、アメリカの臨床心理学者です。
親子関係をはじめとする人間関係におけるコミュニケーションに注目し、親が子どもとよりよい関係を築くためのプログラムを開発しました。
それが「Parent Effectiveness Training(P.E.T.)」です。このプログラムは、カウンセリングや学習・発達心理学、教育学などの研究成果を基礎としています。
日本では、1977年にゴードン博士の著書が翻訳出版された際、「親業」という言葉が初めて使われました。その後、1979年に日本で初めて親業訓練講座が開かれ、1980年には親業訓練協会が設立されました。
現在では、親子関係だけでなく、夫婦や職場など、さまざまな人間関係に応用されるゴードンメソッドも紹介されています。
参考:親業訓練協会|親業とは?
ゴードン博士が大切にした人間関係の考え方
親業の根底にあるのは、子どもも親も、それぞれが自分の気持ちや希望を持つ一人の人間だという考え方です。
親だからといって、いつも正しい答えを持っているわけではありません。
子どもだからといって、親の考えに従うだけでよいわけでもありません。
親と子どもは立場こそ違いますが、お互いを一人の人間として尊重することが大切です。
この考え方が、親業の3つの柱につながっています。
親業の基本は3つ!「聞く・話す・対立を解く」
親業には、基本となる3つの柱があります。


この3つは、単に別々の会話テクニックではありません。
子どもの気持ちを理解すること、親の気持ちを伝えること、そして意見がぶつかったときに一緒に解決すること。
それぞれがつながり、親子のコミュニケーションを支えています。
① 聞く|子どもの気持ちを理解する
これは、子どもの話をただ黙って聞くことではありません。
言葉の奥にある気持ちや思いを理解しようとし、受け止めたことを相手に伝える聞き方です。
例えば、子どもが学校から帰ってきて、
「今日、友達に嫌なことを言われた」と話したとします。
そんなとき、親はつい、
「そんなこと気にしなくていいよ」「あなたも言い返せばよかったのに」
と、励ましたりアドバイスしたりしたくなるかもしれません。
でも、子どもが求めているのは、解決策ではなく、まず気持ちをわかってもらうことかもしれません。
たとえば、「嫌なことを言われて、悲しかったんだね」
と返してみる。
それだけでも、子どもが自分の気持ちを話しやすくなるきっかけになります。
聞くことは、親が正しい答えを出すためではなく、子どもの気持ちを理解するためのものです。
子どもの話を聞くときは、すぐに否定したり、結論を急ぐ必要はありません。



このように、子どもの気持ちを受け止める聞き方は、「能動的な聞き方」と呼ばれます。
② 話す|親自身の気持ちを伝える
一方、親業では、親自身の気持ちや考えを率直に伝える方法を「わたしメッセージ」と言います。
子どもの気持ちを聞くことは大切ですが、親が自分の気持ちを我慢し続ける必要はありません。親にも困っていることや、心配していることがあります。
例えば、子どもがおもちゃを片づけない場面です。
「何度言ったら片づけるの!」
と伝えると、子どもは自分自身を責められたように感じることがあります。
一方で、
「床におもちゃがあると、踏んで壊してしまいそうで心配なんだ」
と伝えれば、親が何に困っているのかが具体的に伝わります。
わたしメッセージでは、子どもの人格や性格を責めるのではなく、親自身の気持ちを伝えることを大切にします。
子どもを尊重することと、親が自分の気持ちを伝えることは、どちらも同じくらい大切です。
親も一人の人間として、自分の思いや困っていることを伝えてよいのです。
③ 対立を解く|親子で納得できる方法を探す
親子で生活していると、考え方や希望が合わないこともあります。
例えば、
- 子どもはゲームを続けたいけれど、親は早く寝てほしい
- 子どもは遊びに行きたいけれど、親は宿題を終わらせてほしい
- 子どもは好きな服を着たいけれど、親は気温に合った服を着てほしい
- こうした場面では、親の意見を通すか、子どもの希望を受け入れるかという二択になりがちです。
親業では、このような対立を解決する方法として「勝負なし法」を使います。
どちらかが勝って、どちらかが負けるのではなく、親と子どもが一緒に解決策を考える方法です。
例えば、ゲームを続けたい子どもに対して、
「どうしたらゲームも楽しめて、明日の朝も困らないかな?」
と問いかけてみる。
親の希望だけを押し通すのではなく、子どもの考えも聞きながら、お互いが納得できる方法を探します。
もちろん、すべての希望を叶えられるわけではありません。安全や健康に関わることでは、親が責任を持って判断する必要もあります。
それでも、親子で話し合う姿勢を持つことは、子どもが自分で考える機会にもつながります。
3つの柱は、どのようにつながっている?
ここまで紹介した3つの柱は、それぞれ違う役割を持っています。


例えば、子どもが何かに悩んでいるときは、まず話を聞くことが大切です。一方、親が困っているときは、親自身の気持ちを伝える必要があります。そして、親と子どもの希望がぶつかったときには、一緒に解決策を探します。
このように、今誰が困っているのか、何が問題になっているのかによって、使う方法も変わります。3つの柱を状況に合わせて使い分けることが、親業の基本です。
親業を取り入れるメリット
親業を学び、日々のコミュニケーションに取り入れることで、親子の関係を見直すきっかけになります。
ここでは、期待できるメリットを紹介します。
子どもの気持ちに気づきやすくなる
子どもの話を最後まで聞き、気持ちを受け止めようとすることで、普段は見えにくい本音に気づくことがあります。
親がすぐに答えを出すのではなく、子どもが自分の気持ちを話せる時間をつくることが大切です。
親自身の気持ちも大切にできる
子どもの気持ちを尊重することは、親が我慢し続けることではありません。親自身の困りごとや希望も、言葉にして伝えてよいのです。
お互いの気持ちを大切にすることで、一方だけが負担を抱え込まない関係を目指せます。
子どもが自分で考える機会になる
親がすぐに答えを教えるのではなく、子どもの考えを聞き、一緒に解決策を探すことで、自分の気持ちや希望を整理する機会になります。
親子で話し合う習慣につながる
意見が違ったときに、どちらかが一方的に決めるのではなく、話し合うことを意識できるようになります。
親子で考えを伝え合う経験は、日々の関係を見直すきっかけにもなるでしょう。
親業を実践するときの注意点
親業は、すぐに親子関係がうまくいく魔法の方法ではありません。取り入れるときには、知っておきたいこともあります。
すぐに効果が出るとは限らない
今まで親が注意することの多かった家庭では、急に聞き方や話し方を変えても、子どもがすぐに反応してくれるとは限りません。
最初は戸惑ったり、いつもどおり反発したりすることもあります。焦らず、少しずつ取り入れていきます。
言葉だけをまねしない
「悲しかったんだね」「嫌だったんだね」と子どもの言葉をリピートすれば、必ず子どもが心を開くわけではありません。
子どもの気持ちを本当に理解しようとする姿勢が大切です。気持ちを決めつけず、違っていたら素直に聞き直しても大丈夫です。
子どもの希望をすべて受け入れる必要はない
親業は、子どもの希望を何でも叶える方法ではありません。親にも生活があり、安全や健康を守る責任があります。
子どもの気持ちを尊重しながらも、必要なルールや制限を設けることは大切です。
親が一人で抱え込まない
親業を学んでも、家庭の問題がすべて解決するわけではありません。子どもの心身の不調や深刻な親子関係の悩みなど、専門的な支援が必要な場合もあります。
そのようなときは、学校や自治体の相談窓口、医療機関なども頼りましょう。
親業はどんな人に向いている?
親業は、特別な悩みを抱えている家庭だけのものではありません。日々の親子の会話を大切にしたい人なら、誰でも学ぶきっかけにできます。
特に、次のような方におすすめです。
- 子どもにすぐ怒ってしまい、あとから反省することが多い
- 子どもの話をもっと聞いてあげたい
- 子どもの気持ちを理解したい
- 親の考えを押しつけずに伝えたい
- 子どもの自主性を大切にしたい
- 親子で話し合える関係を築きたい
また、親業は母親だけのものではありません。父親や、子どもと関わる祖父母など、家族みんながコミュニケーションを見直すヒントになります。
親業についてよくある質問
- 親業は幼い子どもでも実践できますか?
-
親業の考え方は、子どもとの日常的なコミュニケーションに取り入れられます。
ただし、子どもの年齢や発達段階によって、言葉の選び方や伝え方を変えることが大切です。
幼い子どもには短くわかりやすい言葉で伝え、年齢が上がるにつれて、本人の考えや希望を聞きながら話し合う機会を増やしていくとよいでしょう。
- 親業は父親にも役立ちますか?
-
はい。親業は母親だけを対象とした考え方ではありません。
父親も、子どもの話を聞いたり、自分の気持ちを伝えたり、親子で解決策を考えたりする場面で活用できます。
- 親業とアドラー心理学は同じですか?
-
親業はトマス・ゴードン博士が開発したコミュニケーションプログラムです。
一方、アドラー心理学はアルフレッド・アドラーの考え方をもとにした心理学です。
どちらも相手を尊重する関わり方を考えるうえで参考になりますが、理論や方法は異なります。
- 親業は本を読むだけでも学べますか?
-
本や記事を通じて、親業の基本的な考え方を学ぶことはできます。一方、実際の会話では、相手の表情や反応を見ながら言葉を選ぶ必要があります。
親業訓練協会などが案内している講座では、ロールプレイや話し合いを通して実践的に学ぶ機会もあります。
まずは基本を知り、必要に応じて講座を活用するのもよいでしょう。
- 親業を実践すれば、子どもは言うことを聞くようになりますか?
-
親業は、子どもを親の思いどおりに動かすための方法ではありません。
子どもの気持ちを理解し、親の気持ちも伝えながら、お互いに納得できる関係を目指すものです。
そのため、必ず子どもが言うことを聞くようになるわけではありません。
子どもの自主性を尊重しながら、親子で対話することを大切にしましょう。
まとめ|親も子どもも大切にする会話から始めよう
親業とは、親と子どもがお互いを尊重しながら、よりよい関係を築くためのコミュニケーション方法です。
基本となるのは、「聞く」「話す」「対立を解く」、の3つです。
子育てをしていると、いつも穏やかに話せるわけではありません。忙しい日もあれば、イライラしてしまう日もあります。
大切なのは、いつも完璧な親でいることではありません。子どもの気持ちに耳を傾け、自分の気持ちも大切にしながら、少しずつ会話を重ねていきたいと思いました。
参考資料・公式情報
- 親業訓練協会「親業とは?」
- 親業訓練協会「親業訓練の3つの柱」
- 親業訓練協会「親業訓練の理念」
- 親業訓練協会「協会のプロフィール・あゆみ」
※本記事は親業の基本的な考え方を紹介するものです。個々の家庭の問題に対する専門的な相談や医療的な助言に代わるものではありません。

